金融・銀行経済相場・株2026年10月31日日本語EN中文

日銀の0.25%の利上げで、メガバンクの金利収入は何%増えるのか

2026年10月30日、日本銀行は政策金利を1.25%程度に据え置いた。9人の政策委員のうち1人は1.5%への利上げを提案し、否決されている。

次の0.25%の利上げは、いつかは来る前提で市場が動いている。そこで本稿の問いを一つに絞る。

政策金利が0.25%上がると、三菱UFJ・三井住友・みずほの3メガバンクの資金利益は、それぞれ何%増えるのか。

問いと背景

資金利益とは、貸出や有価証券から受け取る利息から、預金などに払う利息を引いた額である。銀行の本業の稼ぎの中心にあたる。政策金利が上がると、受け取る利息も払う利息も増えるが、増え方の速さが違う。この速さの差が、利上げが銀行の利益を押し上げる理由になる。

日銀は2024年3月にマイナス金利を解除し、その後、2024年7月に0.25%、2025年1月に0.5%、2025年12月に0.75%、2026年6月に1.0%、2026年9月に1.25%へと金利を上げてきた[1]。10月30日の会合は据え置きで、8対1の賛成多数だった[1]。

3メガのうち2社は、0.25%の利上げ1回あたりの効果を開示している。三井住友は資金利益が初年度に約1,100億円、5年目に約1,500億円増えるとし[2]、みずほは金利収支が年間で約1,200億円増えるとしている[3]。3メガの2025年度の純利益は、三菱UFJが2兆4,272億円、三井住友が1兆5,830億円、みずほが1兆2,486億円だった[2][3][5]。三菱UFJは0.25%あたりの数字を出しておらず、政策金利が0.5%から1.0%へ上がる間の税前利益への影響を約3,600億円と示している[4]。

ここで使う専門用語を一つ定義しておく。預金金利の追随率(β)とは、政策金利が1上がったとき、預金金利がどれだけ上がるかの比率である。βが小さいほど、銀行の取り分は大きくなる。同じように、貸出金利の追随率(α)は、政策金利が1上がったとき、貸出金利がどれだけ上がるかの比率である。αが大きいほど、銀行の受け取る利息は速く増える。

日銀の当座預金への付利も、この計算では大事な役割を持つ。付利とは、銀行が日銀に預けているお金につく金利で、現在は政策金利と同じ1.25%に置かれている[1]。預金を集めても貸し出せずに余ったお金は、日銀に置いておくだけで政策金利と同じ利息を生む。余ったお金が大きい銀行ほど、利上げの恩恵を早く受けやすい。

東京の街並み。3メガバンクの国内の預金と貸出の多くは、こうした都市の企業と家計から集まっている
東京の街並み。3メガバンクの国内の預金と貸出の多くは、こうした都市の企業と家計から集まっている

データと方法

使うのは、各社が開示した2025年度(2026年3月期)の資金利益と、国内の預金・貸出の残高である[2][3][5]。三菱UFJは国内預金185.2兆円・国内貸出78.1兆円、三井住友銀行は国内預金135.9兆円・国内貸出71.6兆円、みずほは国内円預金123.9兆円・国内貸出57.8兆円になる。

利上げ1回あたりの資金利益の増加は、次の3つの和で近似する。

(1) 貸出:貸出残高×0.25%×貸出金利の追随率(α)

(2) 余った預金:預金から貸出を引いた残りを日銀の当座預金に置くとし、その分は政策金利と同じだけ利回りが上がる(付利は政策金利と同じ水準)

(3) 預金:預金残高×0.25%×預金金利の追随率(β)を差し引く

αとβの基準値は、実際の金利の動きから置いた。3メガの普通預金金利は、政策金利の0.25%の上げに対して0.10%ずつ上がってきた(2025年1月・12月、2026年6月・9月)[6]。βの基準は0.4とする。貸出は、日銀の統計で国内銀行の貸出約定平均金利(ストック)が、マイナス金利の解除から2026年8月までに0.72%上がった[7]。同じ期間の政策金利の上げ幅1.35%で割った0.53をαの基準とする。新規の貸出に限ると、同じ期間に0.683%から1.782%へ1.10%上がっており[7]、比率は0.81になる。既にある貸出は、固定金利のものから順に入れ替わるため、ストックの上がり方は新規より遅い。

預金側の数字も見ておく。全国の銀行の普通預金の平均金利は、2024年2月の0.001%から2026年10月には0.331%になった[7]。1年ものの定期預金(300万円未満)は、0.005%から0.486%に上がっている[7]。

この式は、三井住友の開示した前提(円貨の貸出約70兆円・預金約130兆円)に当てはめると、約1,128億円になる。会社が示した初年度の約1,100億円とほぼ一致するので、式の形は大きく外れていないと考えた。

結果

基準(α=0.53、β=0.4)での試算は次のとおりである。表の増加率は、利上げから1年目の効果を示している。

銀行国内預金国内貸出資金利益の増加(試算)2025年度の資金利益増加率会社の開示
三菱UFJ185.2兆円78.1兆円約1,860億円30,062億円6.2%0.5→1.0%で約3,600億円(税前)
三井住友135.9兆円71.6兆円約1,197億円27,196億円4.4%初年度約1,100億円
みずほ123.9兆円57.8兆円約1,179億円13,770億円8.6%年間約1,200億円

問いへの答えは、基準のケースで、資金利益がおよそ4〜9%増えるという数字になる。三菱UFJの約1,860億円は、0.5%幅で約3,600億円という同社の開示を2回の利上げで割った約1,800億円にも近い。

増加率に差が出るのは、預金と貸出の差の大きさが違うからである。三菱UFJは国内預金のうち100兆円を超える額が貸出に回っておらず、その分が利上げの効果を大きくしている。みずほは預金に対して資金利益がもともと小さく、同じ0.25%でも増え方の比率が高く出る。三井住友は貸出の比率が高く、余った預金の取り分が相対的に小さい。その代わり、三井住友は5年目に約1,500億円まで効果が増えると開示している[2]。固定金利の貸出が、高い金利の貸出へ入れ替わっていくからである。

税金を30%と仮定して税引き後に直すと、増加額は三菱UFJで約1,302億円、三井住友で約838億円、みずほで約825億円になる。2025年度の純利益に対しては、それぞれ約5.4%・5.3%・6.6%にあたる。利上げ1回で、純利益が5〜7%ほど上乗せされる計算になる。

図1 利上げ0.25%1回あたりの資金利益の増加。試算(α0.53・β0.4)と会社の開示の比較。三菱UFJの開示は0.5→1.0%の約3,600億円(税前)を2回で割った値。出典:各社の決算資料・説明会資料[2][3][4][5]。図はYUKI CAPITALが作成
図1 利上げ0.25%1回あたりの資金利益の増加。試算(α0.53・β0.4)と会社の開示の比較。三菱UFJの開示は0.5→1.0%の約3,600億円(税前)を2回で割った値。出典:各社の決算資料・説明会資料[2][3][4][5]。図はYUKI CAPITALが作成

感度分析

結果は、βとαの置き方で大きく変わる。βを0.3・0.4・0.5・0.7、αを0.53と0.81(新規の貸出金利の追随率)で動かした[7]。

条件三菱UFJ三井住友みずほ
α0.53・β0.37.7%5.7%10.8%
α0.53・β0.4(基準)6.2%4.4%8.6%
α0.53・β0.54.6%3.2%6.3%
α0.53・β0.71.6%0.7%1.8%
α0.81・β0.48.0%6.2%11.5%
α0.81・β0.73.4%2.5%4.8%

βが0.4から0.7へ上がると、増加率は3社とも半分以下になる。逆に、貸出の金利が新規の貸出並みに速く上がれば、増加率は2〜3%ほど上乗せされる。8通りのうち最も低いケースは0.7%、最も高いケースは13.8%だった。

預金の追随率は、これまでの利上げでは0.4前後で動いてきた。ただ、全国の銀行の普通預金の平均金利は、政策金利の上げ幅1.35%に対して0.33%しか上がっておらず、比率では約24%にとどまる[7]。定期預金は約36%である。預金の中身によって、追随の速さはかなり違う。普通預金の多い銀行ほどβは低く、定期預金の比率が上がるほどβは高くなる。

αの側にも幅がある。日銀の金融システムレポートは、市場の金利に連動する貸出の比率が高い大手行ほど、既にある貸出の金利の上がり方が大きいと分析している[8]。3メガは中小の銀行より、αが基準の0.53より高い側に寄っている可能性がある。

図2 預金金利の追随率βを動かしたときの資金利益の増加率。実線は貸出の追随率α0.53(貸出ストック)、点線はα0.81(新規貸出)。点線の縦線は基準のβ0.4。出典:各社の決算資料[2][3][5]、日本銀行の統計[7]。図はYUKI CAPITALが作成
図2 預金金利の追随率βを動かしたときの資金利益の増加率。実線は貸出の追随率α0.53(貸出ストック)、点線はα0.81(新規貸出)。点線の縦線は基準のβ0.4。出典:各社の決算資料[2][3][5]、日本銀行の統計[7]。図はYUKI CAPITALが作成

考察

反対の見方もある。金利が上がると、預金者は普通預金から定期預金や投資信託へお金を移す。そうなると、銀行が払う利息は式よりも速く増え、βは0.4より高くなる。民間の調査でも、政策金利の0.25%の上げに対して普通預金は0.1%、変動金利の住宅ローンは0.25%上がる前提が置かれている[9]。みずほの経営陣も、定期預金のコストの負担から、効果は年間1,200億円に少し届かない見込みだと説明している[3]。

もう一つは、預金そのものが流出するおそれである。2026年11月2日からは、3メガの普通預金金利が0.5%に上がる。これは1992年8月以来の水準と報じられた[6]。金利の高い他の金融機関や国債へお金が移れば、式の前提にある預金の残高が減る。

この試算には限界もある。第1に、余った預金をすべて日銀の当座預金に置くと仮定したが、実際には国債や海外の資産にも振り分けられている。第2に、国内の預金・貸出の残高は会社ごとに範囲が違い、厳密には比べられない。第3に、貸出の金利が上がることで、借り手の倒産が増えるおそれは入れていない。第4に、海外の金利や為替の動きも入れていない。3社とも海外の貸出が大きく、全体の利益はその影響も受ける。

答え合わせの基準は、2026年11月中旬に出る3社の中間決算になる。9月の1.25%への利上げを受けて、通期の資金利益の見通しがどれだけ上方修正されるかを見れば、βとαの実際の水準に近づける。

結論

日銀の0.25%の利上げ1回で、3メガの資金利益は、基準のケースでおよそ4〜9%増えるという試算になった。金額にすると、1社あたり約1,200億〜1,900億円である。

ただし、この数字は預金金利の追随の速さに大きく左右される。βが0.7まで上がれば、増加率は1〜2%前後まで下がる。利上げが銀行の追い風になるかどうかは、金利の水準より、預金者がどこへお金を動かすかで決まる面が大きい。

僕はこう見ている

僕は三菱UFJ・りそな・三井住友トラスト・三井住友の4行の株を持っている。買ったのは長期金利が0.75%〜1%くらいの時期で、長期金利が2%を超えたら読みは当たったと思っている。10月の利上げもありうると見ていたが、結果は据え置きだった。

売る条件は、金利が下がっていく局面に入ったと判断したときで、金利が下がらないうちは持つ。だから今回の据え置きでも、4行の持ち方は変えない。銀行株で見るのは決算より、日銀の判断と長期金利だけにしている。

出典

  1. 日本銀行「当面の金融政策運営について」2026年10月30日 https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k261030a.pdf
  2. 三井住友フィナンシャルグループ「2025年度決算 投資家説明会資料」2026年5月18日 p.9 https://www.smfg.co.jp/investor/financial/latest_statement/2026_3/2026_fy_setumei.pdf
  3. みずほフィナンシャルグループ「2025年度決算 会社説明会資料」2026年5月19日 p.27・p.36 https://www.mizuho-fg.co.jp/investors/financial/briefing/pdf/20260519_1.pdf
  4. 三菱UFJフィナンシャル・グループ「MUFGの強み」2026年1月 p.26 https://www.mufg.jp/dam/ir/investors/seminar/pdf/slides260121_ja.pdf
  5. 三菱UFJフィナンシャル・グループ「2025年度 決算ハイライト」2026年5月15日 https://www.mufg.jp/dam/ir/fs/2025/pdf/highlights2603_ja.pdf
  6. みずほ銀行「円普通預金金利の改定について」2026年9月18日 https://www.mizuhobank.co.jp/release/pdf/20260918_2release_jp.pdf
  7. 日本銀行 時系列統計データ検索サイト(預金・貸出関連の金利)2026年10月19日更新 https://www.stat-search.boj.or.jp/
  8. 日本銀行「金融システムレポート」2026年4月 https://www.boj.or.jp/research/brp/fsr/data/fsr260421a.pdf
  9. みずほリサーチ&テクノロジーズ 調査レポート 2026年6月8日 https://www.mizuhobank.co.jp/corporate/mhri/research/report/2026-0057/index.html

写真:Kate Branch、Mohamed Jamil Latrach(Unsplash)。図はYUKI CAPITALが作成

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